■湖中対酒作 /張謂
夜坐厭わず 湖上の月
昼行厭わず 湖上の山
眼前の一尊 又長えに満ち
心中万事 等閑の如し
主人黍有り 万余石
濁醪数斗 応に惜しまざるべし
即今相対して 歓をつくさずんば
別後相思うも復何の益かあらん
茱萸湾頭 帰路はるかなり
願わくは君且らく宿せよ黄公の家
風光かくの如くして人酔わずんば
参差として東園の花に辜負せん
→夜は座ったまま湖上の月を眺めていつまでも飽きない。
昼は湖のほとりの山を歩き回っていつまでも飽きない。
月の前に有る酒壷はまた、いつもいっぱいに酒を満たしている。
こうして心の中には何もかも、一つも気にかかるものがなくなってしまったようだ。
この家の主、このわたしは、一万石あまりの黍を持っている。
濁り酒の二斗や三斗、けちけちするはずがないというものだ。
それよりも今、こうして向かい合いながら存分に楽しまず、
別れた後から懐かしがってみても、何の役に立つものか。
この茱萸湾のあたりからは君の帰り道は遠い。
まあ一晩、この居酒屋に泊まって行ってくれたまえよ。
こんなよい景色を前に酔わないのは、東の庭に咲き誇る花々に
失礼と言うものじゃないか。